交通事故による失声後、三船和子の復帰までの道のりは平坦ではありませんでした。喉の手術を繰り返しても以前のような高音や声量は戻らず、日常会話すらままならない日々が続きました。絶望の中で彼女を物心両面から支え続けたのが、元歌手で音楽プロデューサーでもあった実の夫です。
「もう一度、歌の舞台へ立たせてやりたい」という夫の強い信念のもと、発声練習を基礎からやり直す過酷な訓練が続けられました。かつての澄んだ美声とは異なる、少しハスキーで深みと哀愁を帯びた「新しい声」が生まれた瞬間でした。
制作陣は、その復活劇と夫婦の歩みを間近で見ていたからこそ、彼女の飾らない人柄と夫婦の歴史をそのまま投影した楽曲『旦那様』を書き上げました。発売当初は静かな滑り出しだったものの、有線放送へのリクエストから火がつき、主婦層や中高年男性の間で口コミが爆発。結果としてオリコン演歌チャート長期連続1位、累計売上100万枚を突破する大復活劇を成し遂げ、同年の数々の音楽賞を受賞しました。