田村正和のキャリアは、時代を象徴する名作で彩られている。若き日の彼を決定づけたのは、妖艶なニヒリズムが漂う時代劇『眠狂四郎』だった。無駄を削ぎ落とした殺陣、憂いを帯びた眼差しは、お茶の間の視聴者を釘付けにした。
やがて時代が平成へと移り変わると、フジテレビ系列で放送されたサスペンス刑事ドラマ『古畑任三郎』で社会現象を巻き起こす。黒ずくめのスーツに身を包み、独特の語り口で犯人の心理を追い詰めていく警部補。三谷幸喜の緻密な脚本と正和の怪演が見事に融合し、日本のテレビドラマ史に燦然と輝く金字塔となった。
一方、ホームコメディの傑作『パパはニュースキャスター』では、3人の娘に振り回される不器用なニュースキャスターを軽妙洒脱に演じ切った。しかし、ドラマの中で良きパパや個性的な父親像を演じれば演じるほど、彼自身の私生活は完璧なベールに包まれていった。私服姿で街を歩く姿すら目撃されない徹底ぶり。それは「田村正和という役柄」を24時間演じ続けるプロフェッショナルとしての覚悟そのものだった。