『風の抄 あらすじ』の根幹をなすのは、江戸幕府第三代将軍・徳川家光の治世における、幕府と朝廷の暗闘です。幕府の軍学・剣術指南役として確固たる地位を築いた柳生宗矩の長男でありながら、父との確執や幕府の権謀術数に距離を置き、諸国を放浪していた柳生十兵衛。ある日、朝廷と反幕府勢力を結ぶ危険な密書「風の抄」の存在が浮上し、江戸の政界に不穏な空気が立ち込めます。
物語の見どころは、武術としての強さだけでなく、哲学としての柳生新陰流が深く掘り下げられている点です。「人を殺める剣」ではなく「人を活かす剣」――いわゆる活人剣(かつにんけん)の理念が、謀略渦巻く政治闘争の中で激しく試されます。古山寛氏の手腕により、幕閣重鎮の松平信綱や僧侶の天海ら実在の歴史上のキーパーソンが絶妙に絡み合い、歴史の裏面で起きたかもしれないリアルなサスペンスへと昇華されています。
十兵衛は幕府の隠密活動に巻き込まれながらも、単なる手先には成り下がりません。一刀の重み、刃を交える武芸者たちの誇りと哀哀たる末路を見つめる彼の眼差しが、読者に深い余韻を残します。静けさの中に突如訪れる電光石火の剣戟シーンは、漫画表現の極限を味わえる必見のハイライトです。