「茶碗蒸しの歌」の最大の魅力は、濃厚な鹿児島弁(薩摩狂句・薩摩言葉)でテンポよく展開されるユーモラスな歌詞にあります。標準語圏の人が初めて聴くと外国語のようにも聞こえるフレーズには、実は日常の微笑ましいドタバタ劇が描かれています。
代表的な歌詞の構成と、その現代語訳は以下の通りです。
【鹿児島弁の原詩】
うんだもこら いけなもんな
あたいげんどん 茶わん蒸し
本体お前な 虫じゃろかい
畑の虫かよ 田んぼの虫かよ
どっこい引っこ抜いてみれば
虫じゃなかもん 団子じゃもん
茶わんについた 虫じゃろかい
めごためごた めごためごた
【現代日本語訳】
「あらまあ、これはどうしたことだ!
私の家の茶碗蒸しときたら……
だいたいお前は、本当に虫なのかい?
畑にいる虫かい? それとも田んぼの虫かい?
どっこい(箸で)引っこ抜いてみたら
虫なんかじゃないよ、お団子じゃないか!
茶碗にこびりついた虫だとばかり思っていたよ。
ああ恥ずかしい、実に照れくさいことだ!」
歌詞の意味を紐解くと、生まれて初めて「茶碗蒸し」という料理に出会った人物が、その名前に含まれる「蒸し(むし)」の響きから「茶碗の中に本物の虫が入っている」と早合点し、大騒ぎする姿がコミカルに描かれています。「めごた」とは鹿児島弁で「恥ずかしい」「照れくさい」「みっともない」といったニュアンスを持つ言葉で、勘違いに気づいた主人公の苦笑いが目に浮かぶような結びとなっています。