収穫後の加工プロセスにも、両者には決定的な断絶があります。製茶工場における最大の違いは、「茶葉を揉む(揉念)か、揉まないか」という点に集約されます。
抹茶の原料と作り方を辿ると、まず摘み取った新鮮な新芽を高温の蒸気で蒸気加熱して酸化酵素の働きを止めます。ここまでは煎茶と同じですが、煎茶がその後「粗揉・揉念・中揉・精揉」という複雑な工程を経て、葉の細胞壁を破壊しながら針状に細長く揉み込んでいくのに対し、抹茶の原料は一切揉みません。
蒸した茶葉をそのまま巨大な専用乾燥炉(碾茶炉)へ通し、平らな状態のまま熱風で乾燥させます。こうして出来上がったパリパリの乾燥茶葉から、夾雑物となる茎(葉骨)や葉脈を風力選別機などで丁寧に取り除き、極上の柔らかい「葉肉部分」だけを抽出したものが、抹茶の直接の原料となる「碾茶(てんちゃ)」です。
この碾茶を、昔ながらの石臼(いしうす)や精密なセラミックミルでじっくり時間をかけて微粉末へと挽き上げることで、ようやく私たちが手にする「抹茶」が完成します。1台の石臼が1時間かけて挽くことができる抹茶の量は、わずか30g〜40g程度。この極限まで細かく挽かれた微粒子(平均粒径約5〜10ミクロン)が、シルクのように滑らかな口当たりと鮮烈な香りを約束します。