カラコルム山脈にそびえ立つK2は、登山界において「魔の山」あるいは「野蛮な山」と恐れられている。標高8848メートルのエベレストが近年、固定ロープやシェルパの重厚なサポートにより大衆化したと指摘される一方、K2は今なお容赦のない牙をむき出しにしている。
酸素濃度が平地の3分の1まで低下する標高8000メートル以上の過酷な領域、いわゆる「デスゾーン」において、K2の傾斜角は異常なまでに急だ。とりわけ登頂直前に立ちはだかる巨岩と巨大な氷塊の複合壁「ボトルネック」は、頭上にいつ崩落するかわからない巨大セラックを抱えた絶望のルートである。2026年の気象観測データによれば、地球温暖化に伴う氷河の変動でこのセラックの不安定化が急速に進行。滑落死や雪崩のリスクは過去最高水準に達している。
「エベレストは体力的試練だが、K2は純粋な生存の賭けだ」。現地のベテランシェルパは語る。14座の8000m峰の中でも、K2の登頂達成者数に対する死亡率の高さは圧倒的だ。生きて戻ること自体が奇跡と称される所以である。