スタジオジブリの歴史的傑作『天空の城ラピュタ』。この作品で彼が演じたムスカ大佐は、日本の名アニメ史において最も知られた悪役の一人として定着している。「見ろ、人がゴミのようだ!」というあまりにも有名な台詞は、彼の低く冷ややかな声の演技なくしてはこれほどの強烈なインパクトを残せなかっただろう。
監督を務めた宮崎駿とのアフレコ現場でのエピソードは、今なおファンを魅了してやまない。寺田自身は声優を本業とするわけではなく、あくまで「一人の俳優」としてマイクの前に立った。余計な感情移入を削ぎ落とし、冷酷な野望を淡々と淡白に吐き捨てるスタイルこそが、結果としてムスカというキャラクターの異常性と知的さを際立たせることになったのだ。
後年のインタビューで本人が語ったところによれば、当時はこれほどまでに長年愛される社会現象になるとは予想していなかったという。声の出演という枠組みを超え、文化として社会に根付いた背景には、彼が宿した圧倒的な品格と邪心のコントラストがあった。