「青年日本の歌」は一般的な軍歌の枠組みに到底収まらない。軍の発注によって作られた軍歌が国家への絶対的服従を讃えるのに対し、本作は国家機構そのものへの異議申し立てであり、クーデターのアンセムだったからだ。そのため、事件発覚後、内務省および音楽出版業界は直ちにレコードの出荷停止と演奏・歌唱の禁止措置を講じた。
暗黒の昭和史において、歌が国家権力によって抹消され、地下へと潜伏していったプロセスは極めて異例である。検閲の目を潜り抜け、レコードの自主盤や手書きの歌詞カードを通じて口伝された事実は、この歌が持つある種の「毒」と「魔力」がいかに強力であったかを物語っている。