『三省堂国語辞典』の編纂者として知られる飯間浩明氏は、こうした意味の変化に対して冷静かつ鋭い観察眼を注ぐ。飯間氏は「辞書は言葉の『正しい・間違い』を決める裁判官ではなく、人々が実際にどう使っているかを記録する鏡だ」と指摘。言葉が時代とともに形を変えるのは不可避であり、誤用が一般化すれば辞書の記述も変化せざるを得ないと論じる。出版業界の現場でも、校閲の基準をどこに置くかという切実な議論が続いている。
一方で、言語学者の金田一秀穂氏は、言葉の多様性を認めつつも現場での混乱に警鐘を鳴らす。「意味が正反対に伝わってしまう慣用句は、単なる誤用以上のリスクを孕む。特に国語教育の現場では、試験のための暗記にとどまらず、なぜそのような意味になるのかという言葉の成り立ちを教えることが不可欠だ」と語る。伝統的な日本語の美しさをどう保ちながら、現代のコミュニケーションに寄せるべきか。二人の専門家の視点は、現代人が直面する言語的課題の深さを物語っている。