私たちの日常は、脳の許容量を遥かに超えた情報刺激に埋め尽くされている。仕事の合間にNetflixで高画質ドラマの最新エピソードを流し見し、ベッドの中ではAmazon Kindleで次々と書籍をザッピングする。刺激の供給が途切れる瞬間など一秒もない。
だが、絶え間ない情報摂取は脳のドーパミン受容体を過労死状態に追い込む。あらゆる快楽に耐性がつき、刺激の閾値が跳ね上がった結果、目の前にある現実世界が白黒の無味乾燥なものへと変貌するのだ。いま世界中で急成長を遂げているメンタルヘルスケア産業でも、この「神経の疲弊」に対するソリューションが注目の的となっている。中でも注目を集めるのが、短期間あらゆるデジタル刺激を遮断するドーパミンデトックスの試みだ。脳を一時的な「情報飢餓」に置くことで、失われた知覚の感度を鮮やかによみがえらせる手法である。