「日本一長いトンネル」の正体を突き止める上で、最初に取り払うべき先入観が「交通種別による構造差」です。日本一長い鉄道トンネルであるJR津軽海峡線の「青函トンネル」は全長53,850m(約53.9km)におよび、長年にわたり交通用トンネルとして世界一の座を守り続けました。一方で、自動車が自力走行する日本一長い道路トンネルは、東京都心を半周する首都高速中央環状線の「山手トンネル」で、その長さは18,200m(約18.2km)です。
なぜ道路トンネルは鉄道トンネルのように50km超というスケールに達しないのか。そこには土木工学上の物理的限界と、人命を守るための厳格な防災基準が存在します。鉄道の場合、運行ダイヤが厳密に管理され、電化路線であればトンネル内に排気ガスが充満するリスクは極めて低く抑えられます。万が一の火災時にも、架線とレールの上を一定速度で前進してトンネル外へ脱出する「走り抜け」の原則が基本です。
対照的に、不特定多数のドライバーが任意の間隔でハンドルを握る道路トンネルでは、排気ガスの換気設備、避難連絡坑の間隔、そして燃料満載の車両同士の追突による火災リスクが桁違いに跳ね上がります。道路法および道路構造令の厳格な規制をクリアしつつ、18km以上もの長さを都市直下に掘削・維持管理できている山手トンネルは、土木関係者の間でも「極限の安全設計が成し遂げた奇跡」と評されています。