『孤狼の血』の第一作において、作品の肉体そのものとなっていたのが役所広司だ。彼が演じた大上章吾は、違法捜査も暴力も辞さない呉原東署の刑事。だが、単なる悪徳警官ではない。暴力団同士の抗争を水面下でコントロールし、街の均衡を保つために己の魂を悪魔に売り渡した男だ。
役所広司の演技は、まさに圧巻の一言に尽きる。煙草の煙をくゆらせ、荒々しい広島弁で相手を恫喝する姿には、昭和という時代の匂いと、終わりゆく男たちの悲哀が色濃く漂っていた。画面に映るだけで空気を支配するその圧倒的なオーラは、若手俳優たちにとって超えるべき巨大な壁として君臨していた。