市川猿之助は、歌舞伎の枠にとどまらず、テレビドラマの世界でも圧倒的な存在感を放っていた。「半沢直樹」での強烈な悪役を演じきり、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも屈指の演技力を見せつけた。お茶の間での認知度が高まるにつれ、看板役者としての重圧は加速度的に増していった。
伝統を守る歌舞伎役者としての顔と、時代の寵児としての顔。その二面性を維持するために払われた代償はあまりにも大きかった。多忙を極めるスケジュールのなかで精神的な余裕が失われ、その歪みが周囲のスタッフや門下生への苛烈な言動へと繋がっていったと見る関係者は多い。