この遺伝子と耳垢の相関関係を世界に先駆けて突き止めた立役者の一人が、長崎大学の吉浦敬音(遺伝学研究者)らの研究グループだ。彼らが主導したABCC11遺伝子ゲノム解析プロジェクトは、日本国内および世界各地の集団データを網羅的に収集し、人類の進化と移動の歴史をゲノム上で裏付けた。
世界的に見ると、欧米人やアフリカ系の大部分が湿性耳垢であるのに対し、東アジア人、とりわけ日本人では乾性耳垢が約84%を占め、湿性耳垢の比率は約16%にとどまる。かつて寒冷地へと適応する過程で変異したABCC11遺伝子が東アジア地域で広まった結果であり、古代の縄文人と弥生人の混血史をも如実に物語る動かぬ証拠となっている。