水族館のメイン水槽にガラスではなくアクリルが採用される最大の理由は、「耐衝撃性(割れにくさ)」と「加工の自由度」にあります。ガラスは硬度が高い反面、一定の限界を超えると一気に全体が粉砕する「脆性破壊(ぜいせいはかい)」を起こす物理的性質を持っています。何千トンもの海水が入った水槽でガラスが一瞬にして粉砕すれば、大惨事を招きかねません。
対してアクリル樹脂はプラスチックの女王とも呼ばれ、一般的なガラスの約10倍から16倍の耐衝撃性を誇ります。アクリルは外からの強い力に対して「しなる」性質(靭性)を持っており、強大な水圧を受けても柔軟に受け止めることができます。万が一過度な負荷がかかった場合でも、即座に全体が粉々に砕け散ることはなく、ヒビが入る程度にとどまるため、水族館という公共空間において安全性の観点からアクリル一択となっています。
さらに、輸送や施工の現実的な限界も関係しています。ガラスは現地で巨大な一枚板として成型・溶着することが極めて困難ですが、アクリルは工場で分割製造したブロックを現地の水族館内で化学的に接合できるため、建物の開口部を越える規格外の巨大水槽を組み上げることが可能です。