本作の波紋は、単行本の発売当時だけにとどまらない。晶文社による話題化に続き文春文庫から文庫版が出版されたことで、より幅広い層へと読者群が拡大した。さらにAmazon Kindleでの電子書籍化やAudibleによるオーディオブックの配信が始まり、若い世代や音声読書を楽しむ層にも浸透している。とりわけAudible版では、ナレーションが醸し出す静謐な静寂と緊迫感が、集落の異様な雰囲気をリアルに再現していると評判だ。
出版業界や報道・ジャーナリズム業界においても、事件の背景にある「噂」という極めてあやふやで捉えがたい現象を徹底的に取材した手法は、高い評価を獲得している。警察の公式発表や表面的な裁判記録をなぞるだけでは決して見えてこない、限界集落の奥底で醸成された現代の怪異をすくい取った作品として、歴史に残る一作となった。