広大な敷地に点在する建造物の多くは、明治から明治以降の行刑史をそのまま残す貴重な資産だ。なかでも明治25年に建てられた「五翼放射状平屋舎房」は、木造行刑建築としては世界最古の規模を誇る。中央の看守所から5本の舎房が放射状に伸びる構造は、少数の看守で効率的に監視を行うために設計された見事な建築知恵の結晶である。
薄暗い廊下に佇み、格子隙間から暗い部屋を覗き込む。足元から伝わる冷気は、かつて暖房も満足になかった極寒の冬を想像させるに十分だ。重要文化財や登録有形文化財に指定されている庁舎や教誨堂、浴場などは、木材の温もりを感じさせる一方で、国家の威信と囚人たちの過酷な日常という二面性を強烈に突きつけてくる。ただの古民家見学ではない。ここは日本の近代化が背負った影の歴史そのものなのだ。