280万点を超える所蔵品を誇るV&Aのなかでも、美術史・デザイン史において突出した重要性を持つエリアが存在します。滞在時間が限られている旅行者でも絶対に外せないハイライトを紹介します。
第一に挙げるべきは、ルネサンスの巨匠ラファエロによる原寸大下絵群「ラファエロ・カートゥーン コレクション(The Raphael Court / Room 48a)」です。バチカンのシスティーナ礼拝堂を飾るタペストリーの原画として制作されたもので、英国王室からの長期貸与によって展示されています。最新鋭の照明設計とデジタル解説が導入された専用ギャラリーは、圧倒的な荘厳さを放っています。
第二の必見スポットは、吹き抜けの巨大空間に圧倒される「キャスト・コート(Cast Courts / Rooms 46a & 46b)」です。19世紀、海外渡航が困難だった時代に職人や学生の教育目的で収集された石膏複製群で、イタリア・フィレンツェのミケランジェロ作「ダビデ像」の実物大複製や、ローマの「トラヤヌス帝の記念柱」が空間を埋め尽くしています。本物を超える熱量で築かれた複製芸術の集積は、世界でも類を見ないV&A独自の象徴的空間です。
さらに、女性を中心に絶大な人気を誇る「ジュエリー・ギャラリー(Room 91-93)」も見逃せません。エリザベス1世が身につけたとされる豪奢な宝飾品から、ナポレオンが妻ジョゼフィーヌに贈ったティアラ、アール・ヌーヴォーや現代のコンテンポラリージュエリーまで、約3,000点もの眩い逸品が暗闇に浮かび上がるドラマチックな空間構成は息をのむ美しさです。
装飾美術・デザイン・ファッションの展示エリアでは、17世紀から現代に至るヨーロッパの服飾史が体系的に展示されており、アレキサンダー・マックイーンやクリスチャン・ディオールなどの前衛的なドレスも間近で鑑賞できます。単なる絵画鑑賞にとどまらない「生活と美の融合」を肌で実感できるのが、V&Aの唯一無二の魅力です。