廃業という最悪の結末を回避すべく立ち上がったのが、竹内まりや本人とその夫であるミュージシャンの山下達郎でした。夫婦は単なるアドバイザーにとどまらず、私財を投じて旅館の経営母体を支え、包括的な再生計画に深くコミットしたと伝えられています。
再生の決定打となったのは、抜本的な事業承継と世代交代でした。5代目・竹内信夫氏は2016年秋に実施された大規模リニューアルの完了を見届けた後、自ら経営の第一線から身を引く決断を下します。そして2017年2月1日、竹内まりやの姪の夫にあたる当時29歳の丸尾聖治氏が6代目の新社長に就任したことが公式に発表されました。
丸尾氏は外部の宿泊業やブライダル事業で培った現代的なマネジメント手法を導入し、伝統的な家族経営のしがらみを打破。館内オペレーションのDX化、客室稼働率に応じたダイナミックプライシングの導入、若手スタッフの積極採用によるホスピタリティ改革を推進しました。さらに、2016年秋から約半年間をかけて実施された大規模改修工事では、歴史ある意匠を残しつつ、全館にモダンなアメニティ、耐震補強、現代の宿泊ニーズに応えるベッドルームや専用温泉風呂を新設。山下達郎も音響設備の監修や館内BGMの選定など、カルチャー面での付加価値向上を惜しみなくバックアップしました。