事件直後に逮捕されたドアン・ティ・フォン(ベトナム出身)とシティ・アイシャ(インドネシア出身)の2人は、殺人罪で起訴され、マレーシア法の下で死刑判決を受ける可能性に直面しました。
しかし、裁判を通じて浮き彫りになったのは、彼女たちが冷酷な殺し屋ではなく、北朝鮮工作員によって巧妙に仕組まれた「いたずら動画(YouTube等のドッキリ番組)の撮影」だと信じ込まされていた実態でした。
2人は事件数カ月前から、ショッピングモールやホテルで見知らぬ通行人の背後から近づき、ローションやベビーオイルを顔に塗る「リハーサル」を何度も繰り返させられていました。1回あたり数百ドルの報酬を受け取っており、貧困から抜け出したい一心で「スターへの足がかり」と信じていた心理的搾取の構図が法廷で立証されたのです。
その結果、両国の外交的支援や証拠の再検討を経て、2019年3月にシティ・アイシャへの殺人罪の起訴が取り下げられて釈放。ドアン・ティ・フォンも「危険な武器を用いて傷害を負わせた罪」に減刑され、刑期満了により2019年5月に釈放・帰国を果たしました。2人は現在、それぞれの母国で静かな生活に戻り、ドアン氏はメディアやインフルエンサーとしての活動を模索するなど、過酷な陰謀に巻き込まれた人生の再建を進めています。