吉本せいの経営手腕を象徴する有名なエピソードが、1938年の「通天閣買収」だ。大阪のシンボルであった通天閣を個人投資として買い取ったニュースは、全国に「お笑い王国・吉本」の名を轟かせた。情報の発信基地やシンボルを所有することでブランド価値を高める手法は、現代のメディア戦略そのものと言える。
また、彼女は漫才というジャンルを「文字通り『萬歳』から『漫才』へと進化させた」立役者でもある。横山エンタツ・花菱アチャコという伝説のコンビを誕生させ、スーツ姿でしゃべる現代漫才のスタイルを創出。ラジオという新興メディアを恐れるどころか積極的に活用し、全国へ笑いを届けるメディアミックスを成功させた。成功の秘訣は、常に時代の変化を察知し、伝統に固執せず新しい波に飛び込む圧倒的なスピード感にあった。