大阪メトロ御堂筋線および南海高野線が交差する交通の要所、なかもず駅。その界隈でひときわ目を引く行列の先にあるのが「味の店一番」です。飲食店の盛衰が激しい関西エリアにおいて、昭和49年(1974年)の創業から50年以上の歳月を経てもなお客足が衰えない背景には、単なる「安くて大盛り」にとどまらない、明確な理由が存在します。
第一の理由は、家庭料理の延長では絶対に到達できない本格洋食の調理工程にあります。大衆食堂のような温かみある外観とは裏腹に、厨房で繰り広げられる技法はホテルオークラや名門洋食店に匹敵するクラシックなフレンチの系譜を色濃く反映しています。寸胴鍋で数日間じっくりと素材の旨味を抽出したベーススープ、火加減を秒単位で見極める揚げの技術など、一口ごとに違いがわかる確かな手仕事が施されているのです。
第二の理由は、世代を超えて刷り込まれる「堺市民のソウルフード」としての文化的定着です。学生時代にボリューム満点の定食に救われた若者が、社会人になり、やがて自分の子どもや孫を連れて再び暖簾をくぐるという世代間循環が自然発生しています。飲食マーケティングにおける「LTV(顧客生涯価値)」が半世紀にわたって極めて高い水準を維持している点が、流行り廃りに左右されない強固な集客基盤となっています。