この野球シーンをトラウマ足らしめているもう一つの決定的な要素が、ピッチングマシンを操作する加瀬亮演じる石原のキャラクター性です。
石原は、従来の武闘派ヤクザとは一線を画す「経済ヤクザ・インテリヤクザ」として描かれています。英語を流暢に操り、カジノ運営や資金洗浄をスマートにこなす一方で、暴力に対して一切の感情を挟まない異常な冷酷さを秘めています。
飯塚が泣き叫び命乞いをする中、石原は怒声を浴びせることもなく、淡々と機械のレバーを操作。球がヒットするたびに冷たい笑みを浮かべ、淡々と作業を完遂するその姿は、観客に底知れぬサイコパス性を印象付けました。それまでクリーンで繊細な役柄が多かった加瀬亮が新境地を開いた瞬間であり、暴力の不条理さを象徴する名シークエンスとなっています。