紅茶特有の赤い色素成分であるテアフラビン。これこそが、ウイルスの感染能力を奪う鍵を握る分子だ。昭和大学名誉教授の島村光治氏らの先駆的な研究によれば、テアフラビンはインフルエンザウイルスの表面に存在する突起タンパク質(スパイク)に強力に結合し、ヒトの細胞受容体に付着する能力を瞬時に奪うという。
実験室内での検証では、極めて希釈された紅茶液であっても、接触した直後にインフルエンザウイルスが感染力を失う現象が確認されている。フードサイエンスの視点から見れば、緑茶のカテキンが発酵を経て二量化したテアフラビンは、より強固な抗ウイルス特性を発揮する構造へと変化している。うがいや飲用によって口腔や咽頭の粘膜表面を紅茶が通過する際、侵入を図るウイルスを物理的・化学的にブロックする機序が期待されるのだ。