彼の演技の原点を辿ると、野田秀樹率いる「夢の遊眠社」時代の破天荒な舞台に突き当たる。圧倒的なセリフ量と高速展開、疾走するイメージの渦。あの熱狂の時代に鍛え上げられた言葉のノリと身体能力が、彼の骨格を形作った。
難解な戯曲の言葉であっても、彼の手にかかると不思議なほどすんなりと観客の耳と心に届く。ただテキストを暗唱するのではない。言葉の持つリズムを体に染み込ませ、声のグラデーションとして打ち出す。軽快なテンポで客席を沸かせたかと思えば、直後にズシリと重い一言で空気を凍りつかせる。この緩急の自在さこそ、小劇場運動の熱気とアバンギャルドを潜り抜けてきた男の強みだ。