朝8時。二宮の静かな街並みの中で、ここだけが異彩を放つ。まだ店が開く前だというのに、店先の小道には防寒着を羽織った人々が静かに列を作り始めている。並んでいるのは地元のお年寄りから、始発の電車に揺られてやってきた都心の若いカップル、さらには遠方のナンバープレートを付けた車で駆けつけたパンフリークまで様々だ。
看板商品のハード系パンが焼き上がるタイミングに合わせて漂うのは、通常の電気窯やガス窯では絶対に出せない、深みのある薪の薫香だ。ドアが開いた瞬間、客たちは吸い寄せられるように店内へと入っていく。棚に整然と並べられたパンは、どれも無骨でありながら美しい力強さを宿している。