新潟市美術館の価値を語る上で欠かせないのが、建築家・前川國男(1905–1986)による建築そのものです。ル・コルビュジエの愛弟子として日本のモダニズム建築を牽引した前川が、晩年に心血を注いだ美術館建築の一つであり、1985年の開館から40年余りを経た現在もその輝きは色褪せるどころか陰影を深めています。
設計において前川が意識したのは、隣接する西大畑公園の松林や砂丘地特有の緩やかな起伏との共生でした。建物の外壁には、前川建築の代名詞ともいえる打ち込みタイルが採用され、周囲の緑や空の光を柔らかく反射します。内部に入ると、自然光を巧みに取り込むハイサイドライトや、あえて照度を落としたホールの陰影設計が、日常から非日常の思索空間へと意識を滑らかに切り替えてくれます。
建築学会や空間デザイン関係者の間でも、「前川建築の集大成的な落ち着きがここにある」と高く評価されています。館内のベンチに腰を下ろし、開口部から切り取られた木々の緑を眺めているだけで、鑑賞の心地よい余韻が身体に染み渡ります。単に美術品を収蔵・展示する箱ではなく、建物そのものが一つの鑑賞対象として完結している点を見落としてはなりません。