心臓を描くうえで、歴史的根幹をなすのが医学絵画の巨匠フランク・ネッターの功績である。彼の描いた解剖図譜は、数十年を経た現在も医療イラストレーションの絶対的なバイブルとして君臨している。医師であり絵画家でもあったネッターの描画は、筋肉の質感、冠動脈の走り方、心臓弁の厚みに至るまで、圧倒的な観察眼に支えられていた。
現代のCGやベクター素材の制作者にとっても、彼の作品は最高の教科書だ。色彩のコントラストを利用して複雑な奥行きを表現する手法や、血液の流れを肉眼で理解させる構図の工夫は、現代のデジタル描画にもストレートに受け継がれている。基礎を学ぶクリエイターたちが一様に彼の図鑑へ立ち返る理由はそこにある。