日本の学術史において、民俗学の礎を築いた柳田國男は、地域ごとに残る禁忌や忌み言葉の収集に生涯を捧げた。柳田の研究は、人々が畏怖する怪異や呪いが、実は集落の秩序を保つための社会的装置であったことを明らかにしている。言葉そのものに宿る霊力を重んじる言霊思想に基づき、ネガティブな表現を避ける文化が根付いた。
一方で、明治期に日本の怪談を世界へ紹介した小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は、異邦人の視点から日本人の死生観と禁忌の結びつきを見抜いていた。ハーンが記録した怪異譚の多くは、祖霊への敬意や自然への恐れが裏返しの形をとったものである。民俗学の知見を集約する現代の研究者は、古い忌み言葉が現代人の心理的バリアとしてどのように作用しているかを学術的に追跡している。