女優へと本格的に舵を切った彼女のキャリアにおいて、最大の転機となったのが今村昌平監督の映画『黒い雨』だ。原爆の悲劇を描いたこの重厚な作品で、被爆の苦悩を抱えるヒロイン・矢須子役を演じきった。しかし、その撮影の陰には想像を絶する葛藤が存在していた。
アイドルのイメージを完全に脱ぎ捨て、一人の女性の苦悩と静かな強さを全身で表現するため、過酷な役作りに挑んだ。モノクロームの映像美の中で際立つ、言葉を超えた表情の凄み。この渾身の演技が高く評価され、彼女は日本アカデミー賞最優秀主演女優賞に輝く。単なる元アイドルという偏見を完全に打ち破り、名実ともに日本を代表する大女優としてその名を刻んだ瞬間だった。