飛田の特異性は、行政や司法権力との緊張感あふれるパワーバランスの上に成り立っている。治安維持を司る大阪府警察と、自治組織である飛田料理組合の間には、長年にわたる暗黙の了解と厳格な境界線が存在してきた。暴力団の排除や未成年者の雇用防止、薬物犯罪の撲滅に関しては組合側が徹底した自浄作用を発揮し、警察側の介入を最小限に抑えるための厳正な管理体制が敷かれている。
この特異な自治構造を語る上で欠かせないのが、若き日の橋下徹弁護士の存在だ。政界へ進出する以前、彼は飛田料理組合の顧問弁護士を務め、飲食街としての法的な防衛ラインの構築や権利関係の整理に関わっていた。のちに大阪府知事・大阪市長へと上り詰め、大阪の都市再開発を牽引することになる政治家が、かつてこの色街の法的な結界を支えていたという皮肉な巡り合わせは、大阪という都市が抱えるプラグマティズムと清濁併せ呑む土壌の深さを象徴している。