当時の音楽番組関係者やスタジオミュージシャンが口を揃えて賞賛するのが、デビュー時点における中森明菜の歌唱力の評判です。
16歳という若さでありながら、彼女は地声と裏声(ファルセット)の切り替えを極めて滑らかに行い、語尾に独特の微細なビブラートを効かせるテクニックをすでに体得していました。当時のアイドルにありがちだった「元気いっぱいに声を張り上げる」歌唱法とは一線を画し、マイクに乗る息遣いまでコントロールするそのボーカルスタイルは、レコーディングエンジニアたちを驚嘆させました。
SNSやコミュニティサイトでも、当時の映像や音源に触れたリスナーから熱いコメントが寄せられています。
「10代の歌声とは思えないほど情感が豊か。ただ上手いだけでなく、胸が締め付けられるような切なさがある」
「派手な少女Aも好きだけど、中森明菜の真骨頂は間違いなくスローモーションのような繊細なバラードにある」
自著や当時の回想録でも、明菜本人は「歌うときに自然と情景が頭の中に広がる」と語っており、テクニック以上に「曲の主人公になりきる憑依型の表現力」がデビュー曲の段階で完成されていたことが窺えます。