中尾彬の人生を語る上で避けて通れないのが、若き日の挫折と葛藤、そして前妻である女優・茅島成美との結婚生活である。武蔵野美術大学で油絵を学んだ後、名門・劇団民藝の研究生となった中尾は、圧倒的な存在感と端正な顔立ちで若手スターとしての階段を駆け上がった。その黎明期に出会い、1970年に結ばれたのが茅島だった。
一児をもうけたものの、互いの多忙や若さゆえのすれ違いが重なり、1975年に結婚生活にピリオドを打つ。当時の芸能メディアを賑わせた離婚劇だったが、中尾はこの手痛い別離を通して「人を生涯愛し抜く覚悟とは何か」を深く己に問い直すことになった。決して平坦ではなかった青年期の蹉跌が、のちに池波志乃という運命の女性と出会った際の「何があっても守り抜く」という揺るぎない覚悟へと昇華されていく。