1976年、当時のザイール(現在のコンゴ民主共和国)北部にあるヤンブク村で、それまでに見たこともない高熱と劇烈な出血症状を伴う奇病が発生した。この未知の病原体サンプルがベルギーのアントワープにある熱帯医学研究所に届けられたとき、当時まだ若き研究者だったピーター・ピオット博士らは、顕微鏡の下で長い糸状の形をした異形のウイルスを目撃する。
最初の流行地近くを流れるエボラ川の名にちなみ、その病原体は「エボラウイルス」と命名された。これが、世界を恐怖に突き落としたエボラ出血熱の公式な記録の始まりである。患者の体液との接触によって容易に感染が拡大し、致死率は80%を超えた。村々は一瞬にして孤立し、未知の死病に対する恐怖がアフリカ大陸を深く包み込んだ。