『迷宮の十字路』が伝説として語られるもう一つの大きな要因が、工藤新一の登場シーンです。劇中中盤、平次は犯人の襲撃を受けて負傷し、和葉が人質として玉龍寺に囚われる絶体絶命の危機に陥ります。そこに現れたのは、傷だらけになりながらも木刀を構える服部平次でした。
しかし、その正体は平次に変装した工藤新一でした。コナンは重い風邪を引いていた状態に加え、服部が持参した中国酒「白乾児(パイカル)」に含まれる成分を配合した灰原哀の「試作解毒薬」を服用。極めて限定的な時間ながら、本来の高校生探偵の姿を取り戻していたのです。
月明かりが差し込む森の中、新一は単身で敵を翻弄し、和葉を救出。その後、駆けつけた本物の平次に後を託して姿を消します。直後、薬の効果が切れる激痛に耐えながら、新一は森の中で毛利蘭と遭遇します。「やっと会えたな…」と優しく声をかける新一と、驚きに涙を浮かべる蘭。薬の限界が迫る中、新一は腕時計型麻酔銃で蘭を眠らせ、再びコナンの姿へと戻っていきました。
この一連のシークエンスは、単なるサプライズにとどまらず、新一と蘭の切ない距離感、平次と新一の深い信頼関係、そして京都の夜の幽玄な空気感が完璧に融合した名場面として、観客の記憶に強く刻まれています。