「辞めろ」運動の背景には、単なる発言問題だけでなく、リニア中央新幹線建設をめぐる巨大な対立構造が根深く存在していた。静岡工区の着工に対して県が待ったをかけ続けた最大の理由は、南アルプス水問題である。トンネル工事によって大井川の流量が減少するのではないかという懸念は、流域住民にとって死活問題であった。
環境保全と地下水資源の確保を大義名分に挙げ、県は慎重な姿勢を崩さなかった。しかし、この主張が「国策事業の足引っ張り」と受け取られる局面も少なくなく、インフラ早期開通を望む他都道府県や経済界からの不満を買い、世論の分断を加速させる要因となった。