日本の官能小説の歴史と文学性を紐解くと、谷崎潤一郎の『痴人の愛』や『鍵』、川端康成の『眠れる美女』など、日本文学の正統な系譜にエロティシズムが深く根ざしていることが分かります。戦後のカストリ雑誌ブームや三面記事小説を経て、1960〜70年代に独自のエンターテインメントとして花開きました。
このジャンルを語る上で欠かせない官能小説の人気作家が、緊縛と耽美の世界を極限まで追求した団鬼六氏です。代表作『花と蛇』に象徴される背徳の美学は、映画界をも巻き込む巨大なカルチャーを築きました。一方、軽妙な一人称の女性語り(「わたし」語り)で一世を風靡した宇能鴻一郎氏は、洒脱なユーモアと官能を融合させ、読者に圧倒的な没入感を提供しました。
1980年代以降、この分野の代名詞となったのがフランス書院文庫です。エンタメとしてのフォーマットを確立しつつ、1991年には「フランス書院文庫官能大賞」を創設。数々の官能大賞の受賞作を通じて実力派作家を多数輩出し、ジャンルのクオリティ底上げと市場拡大に決定的な役割を果たしました。