藍染が放った宣言の中で、最も物語の構造そのものを覆したのが「最初から誰も天に立ってなどいない 神の座の耐えがたき空白を恐れるな 私が天に立つ」という台詞です。この一言は、旧来の少年漫画に見られた「世界征服」や「私利私欲」を目的とする悪役像を根本から覆しました。
長らく読者の間では、藍染の真意について様々な憶測が飛び交っていました。しかし千年血戦篇において霊王の正体――手足を切り落とされ、生贄として現世とソウル・ソサエティの均衡を保つためだけの「物言わぬ生ける屍」であることが明かされたことで、藍染惣右介 目的 真相のピースは完全に揃いました。藍染は、そんな生贄によって欺瞞の上に築かれた秩序を激しく嫌悪していたのです。浦原喜助に対し「私は見下げているのだ!あんなものに支配される世界を!」と激昂した一幕は、常に理性的だった藍染が感情を爆発させた唯一の瞬間でした。
そして物語の幕引きを飾る藍染惣右介 最後のセリフは、彼が単なる冷酷な破壊者ではなかった事実を強烈に物語っています。ユーハバッハが目指した「生と死の境のない、死の恐怖が存在しない世界」を退け、藍染は次のように語りかけました。
「人はただ生きるだけでも歩み続けるが それは恐怖を退けて歩み続ける事とはまるで違う
だから人は その歩みに特別な名前をつけるのだ
『勇気』と」
神の座に立とうとし、世界の構造を変革しようとした超越者・藍染惣右介が、最後に行き着いたのは「死の恐怖があるからこそ、人は勇気を持って前に進める」という人間性の絶対肯定でした。このエピローグのモノローグによって、藍染は単なる敗北者ではなく、物語全体の哲学を完成させる語り部へと昇華したのです。