物語の始まりは1980年代後半、フランス北部の街リールにさかのぼる。創業者でありパティシエのフレデリック・ヴォカンは、18世紀末のフレンチ・ディレクトワール(総裁政府)時代に一世を風靡した伝統菓子「メルヴェイユ」に着目した。当時、重たくなりがちだった洋菓子のレシピをゼロから再構築し、誰も体験したことのない「究極の軽やかさ」を追求したのだ。
彼が導き出した答えはシンプルでありながら、極めて高度な技術を要するものだった。口の中で一瞬にして崩壊するメレンゲ。そこに重ねられるのは、しつこさを一切排除したフレーバークリーム。1997年にリールで第1号店を立ち上げて以来、その口溶けはまたたく間に口コミで広がり、フランス全土からヨーロッパ、そしてアジアへと広がっていくこととなる。