SNSやアニメコミュニティでは、増田俊樹の演技に対して「作品ごとに別人レベルで声の質感が変わる」「キャラクターの人間的な弱さを演じさせたら右に出る者がいない」という評価が定着しています。なぜ彼の芝居はこれほどまでに視聴者の感情を揺さぶるのでしょうか。
その背景には、心理学でいう「感情の二面性(アンビバレンス)」を声に乗せる技術があります。人は強い怒りを感じているときでも心の底に恐怖を抱えていたり、冷徹に振る舞っているときほど孤独を感じていたりするものです。増田俊樹の芝居は、セリフの表層的な意味だけでなく、キャラクターが隠そうとしている「裏の感情」を微かな呼気のブレや音圧の変化で提示します。
例えば『サムライフラメンコ』の羽佐間正義のような主人公キャラクターを演じる際にも、単なる正義の味方ではなく、どこか危うい執着や狂気を孕んだニュアンスを巧みに忍び込ませていました。この「完全無欠ではない、生身の人間臭さ」こそが、視聴者がキャラクターに強い感情移入を果たす最大の要因となっています。