「自分は寝ているつもり」なのに眠りが浅いケースにおいて、臨床現場で最も警戒されているのが「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の潜在化だ。日本睡眠学会の報告によれば、気道の閉塞によって夜間に何度も呼吸が停止すると、血中酸素飽和度が急低下し、脳が窒息の危機を察知して無意識の「微小覚醒」を繰り返す。本人の記憶には残らないものの、脳は一晩中パニック状態に晒され、ノンレム睡眠の深いステージへ潜ることができなくなる。
厚生労働省が策定した「健康日本21(睡眠・休養指針プロジェクト)」においても、睡眠は単なる休止時間ではなく、生活習慣病や心疾患、認知機能低下を防ぐ基盤的健康戦略として明確に再定義された。指針では、日中の過度な眠気や起床時の口の渇き、夜間の頻尿などを重要な危険信号として提示している。睡眠の浅さは個人のメンタルや気合の問題ではなく、精密な医療介入が必要な身体疾患のサインである可能性を忘れてはならない。